「IT派遣はやめとけ」という言葉を見かけて、不安になった方もいると思います。一方で、未経験からITの現場に入る手段として派遣を勧める記事もあり、言っていることが正反対です。
この食い違いには理由があります。「派遣」とひとことで言っても、中身がまったく違う2種類があるからです。登録型派遣と常用型派遣です。この2つを分けずに語ると、話は必ずかみ合いません。
この記事でわかること:登録型と常用型の違い / エンジニア派遣の実態 / 「やめとけ」と言われる4つの理由の検証 / 未経験が使う場合の確認事項 / 派遣から抜けるルート
結論:問題になるのは「派遣」ではなく「登録型かどうか」
先に結論です。「やめとけ」と言われる要素の多くは、登録型派遣の性質から来ています。雇用が派遣期間にひもづいていること、その結果として先の見通しが立ちにくいこと。ここが不安の中心です。
ですので、判断すべきなのは「派遣か正社員か」という大きな括りではなく、目の前の求人が登録型なのか常用型なのかです。まずここを見分けられるようになりましょう。
登録型派遣と常用型派遣の違い
| 比較軸 | 登録型派遣 | 常用型派遣(無期雇用派遣) |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 派遣される期間だけ | 期間の定めなし |
| 派遣先が決まる前 | 登録しているだけ。雇用関係はない | すでに社員。雇用関係がある |
| 案件と案件の間 | 無給(雇用が切れている) | 待機中も給与が出るのが基本 |
| 3年ルール | 適用される | 対象外(同じ現場に3年以上いられる) |
| 賞与・昇給 | ないことが多い | 制度があることが多い |
| 採用の入口 | 登録・職場見学 | 選考がある(正社員採用に近い) |
3行目と4行目が特に大きい違いです。登録型は、案件が終われば雇用も終わります。次が決まるまでの収入がありません。常用型は派遣会社の社員なので、待機期間も雇用は続きます。
4行目の3年ルールについても補足します。労働者派遣法では、同じ人が派遣先の同じ組織単位で働ける期間は原則3年までと決められています。ただし派遣元で無期雇用されている人は、この期間制限の対象外です。つまり常用型なら、3年で区切られません。このあたりの法令の詳細はSESと派遣の違いを法令で整理した記事にまとめています。
エンジニアの派遣は、実は常用型が主流
ここが、多くの人の認識とずれているところだと思います。
「派遣」と聞くと登録型を思い浮かべる方が多いのですが、技術者派遣・エンジニア派遣と呼ばれる領域では、常用型(無期雇用)を採っている会社が中心です。派遣会社の正社員として採用され、そこから客先に派遣される形です。
この形態だと、実態はSESにかなり近く見えます。所属会社の社員として、客先に常駐して働くからです。違うのは指揮命令権の所在で、派遣なら派遣先に、SESなら自社にあります。
ですので、「登録型派遣はやめとけ」という話をそのままエンジニア派遣に当てはめると、判断を誤ります。求人票を見て、自分で確かめてください。見分け方は次のとおりです。
- 雇用形態の欄/「無期雇用派遣」「常用型派遣」「正社員(派遣)」とあれば常用型。「登録」「有期雇用派遣」なら登録型
- 給与の書き方/月給・年収で書かれていれば常用型が多い。時給表記なら登録型の可能性が高い
- 入社の流れ/面接・選考があれば常用型。登録会・職場見学から始まるなら登録型
- 賞与の記載/賞与ありなら常用型の可能性が高い
「IT派遣はやめとけ」と言われる4つの理由を検証する
理由1:配属先を選べない → 本当。ただし程度は会社による
これは事実です。どの現場に行くかは会社が決めます。未経験で入った場合、監視・オペレーション中心の現場に配属される可能性は高いと考えたほうがいいです。
ただし、これは派遣に限った話ではありません。SESでも同じ構造があります。私自身、未経験で転職活動をしたときにエージェントから紹介されたのはすべてSESでしたが、断った理由は形態ではなく実務経験が積めない案件に配属される可能性が高いと判断したからでした。この考え方はSESはやめとけと言われる理由の記事に書いています。
理由2:雇用が不安定 → 登録型は本当。常用型は当てはまらない
登録型については、そのとおりです。案件が終われば雇用が終わり、次が決まらなければ収入が途切れます。3年ルールもあるため、長期の見通しは立てにくくなります。
一方、常用型はこの批判が当てはまりません。派遣会社の社員であり、期間制限の対象外だからです。「やめとけ」の根拠として最も強いこの理由が、常用型では成立しません。ここが2種類を分けて考えるべき最大の理由です。
理由3:年収が上がりにくい → 条件つきで本当
派遣の給与は、派遣先が支払う派遣料金の範囲内で決まります。そのため、自分の成果が直接給与に反映されにくい構造があります。
ただし、2020年4月に施行された改正労働者派遣法により、派遣労働者にも同一労働同一賃金が適用されています。派遣会社は「労使協定方式」または「派遣先均等・均衡方式」のいずれかで待遇を決める義務があり、以前より待遇差は是正される仕組みになっています(執筆時点:2026年8月)。「派遣だから安い」と一律に決めつけるのは、現在は正確ではありません。
理由4:任される範囲が広がりにくい → 一長一短
派遣は契約で業務内容が決まっており、契約外の仕事はさせられません。これは守られている側面でもあります。際限なく雑務を振られる、といったことは起きにくい構造です。
ただ、裏返すと業務範囲が固定されやすいということでもあります。設計や改善提案といった上流の仕事は、契約に含まれていなければ関われません。インフラエンジニアとして伸びる分岐点は構築や運用改善に触れられるかどうかなので、ここは実際に効いてきます。
それでもIT派遣が選択肢になるケース
公平のために、向いているケースも書きます。
- 大手企業の環境に触れられる/派遣先は規模の大きい企業であることが多く、個人では扱えない規模のシステムを見られます
- 研修制度が整っていることがある/常用型の技術者派遣は自社で採用・育成する前提なので、未経験向けの研修を持つ会社があります
- 勤務地や時間の条件を出しやすい/事情があって働き方を絞りたい場合、選択肢になります
- 残業が青天井になりにくい/業務範囲と時間が契約で決まっているためです
特に2つ目は、未経験にとって現実的な意味があります。未経験を採って育てる仕組みを持っている会社は、そう多くありません。
未経験がIT派遣を使うなら、確認すべき4つのこと
先に立場を明かしておくと、私は派遣として働いた経験はありません。ここから書くのは、自分が未経験で転職活動をしたときに実際に使った判断基準を、派遣に当てはめたものです。
私が最終的に見ていたのは、雇用形態でも会社の規模でもなく、「早い段階で実務経験を積めるか」の一点でした。最初の配属が運用や監視であること自体は、悪いことではありません。問題になるのは、そこから構築や運用改善に進める見込みがあるかどうかです。
- 登録型か常用型か/求人票で分からなければ直接聞きます。答えを濁す会社は、その時点で候補から外していいと思います
- 配属先の工程/「監視だけの現場に配属される割合はどのくらいですか」と具体的な数で聞きます
- 次の現場に移る仕組み/自分から異動を希望できるのか、何年目からか。ここが動かせない会社は、入口の配属で数年が決まります
- 直接雇用になった実績/「派遣先に直接雇用された人は過去に何人いますか」。数字が出てこなければ、実質ないと考えたほうが安全です
私自身の話も書いておきます。転職活動のとき、私も派遣を選択肢として考えました。ただ、求人を見ていくうちに完全な未経験のままでは難しいという結論になりました。募集条件に「実務経験1年以上」「2年以上」と書かれているところが多く、応募できる枠がほとんどなかったからです。
裏を返すと、経験が1年でもあるなら派遣という選び方は十分にありだ、というのが調べてみての正直な感想でした。ここは最初の印象から考えが変わった部分です。
配属先を事前に聞けるかどうかについては、私の場合はSESでの話になりますが、未経験で就職活動をしていたときに実際に質問しました。返ってきたのは「未経験だからといって、テストや監視に必ずなるわけではない」という趣旨の答えで、結局、正確なところは分からずじまいでした。上に挙げたチェック項目は、このとき自分が本当に欲しかった答えを言葉にしたものです。
なお、私の知人に派遣で働いている人はいません。ここで書けるのは、自分が求人を見て考えたところまでです。
派遣から抜けるルート
派遣を入口にする場合、出口も先に考えておいたほうがいいと思います。主なルートは3つです。
- 紹介予定派遣を使う/直接雇用を前提とした派遣です。一定期間働いたあとに双方が合意すれば、派遣先の社員になります。派遣期間には上限が定められているので、応募前に条件を確認してください
- 派遣先から直接雇用の打診を受ける/実力次第ですが、前述のとおり実績があるかを事前に確認しておくべきです
- 実務経験を積んで転職する/最も確実な道です。2〜3年で構築や改善の経験を作れれば、選択肢は大きく広がります
3つ目を狙う場合、必要なのは在籍年数ではなく「自分で判断して手を動かした経験」です。何をどこまで任されたかを説明できる状態を作ってください。学習の進め方は未経験からのロードマップにまとめています。
すでに実務経験がある方であれば、常駐を前提としない求人を探す段階に入ります。経験者向けの動き方はインフラエンジニアの転職エージェントの記事を参考にしてください。
まとめ
「IT派遣はやめとけ」と言われる根拠の多くは、登録型派遣の性質から来ています。雇用が派遣期間にひもづき、3年で区切られ、間の収入がない。この点は事実です。
一方で、エンジニアの派遣は常用型(無期雇用)が中心です。常用型には期間制限がなく、待機中も雇用が続きます。「派遣」という言葉だけで判断すると、実態を見誤ります。
見るべきなのは、登録型か常用型か、そして配属先で実務経験を積めるかどうかです。この2つを求人票と面接で確認できれば、「やめとけ」という言葉に振り回される必要はなくなります。



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