インフラエンジニアが大手に転職するには|未経験の現実

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「どうせ転職するなら大手に行きたい」「インフラエンジニアで大手を狙うのは現実的なのだろうか」

その気持ちは自然だと思います。待遇も安定性も、規模の大きい会社のほうが有利な面は確かにあります。私も転職を考えたとき、まず大手の求人から見ました。

ただ、この検討には落とし穴があります。「大手」と一口に言っても中身が3種類あり、未経験に開いている枠はそのうち1つだけです。さらに言うと、仮に大手に入れたとしても、インフラエンジニアとして手を動かす経験が積めるとは限りません。業界の請負構造がそうなっているからです。

この記事では、大手への転職を否定せずに、なぜ未経験からの現実的な入口が中堅SIerになるのかを構造から説明します。そのうえで、それでも大手を受けてみる価値がある理由も書きます。

この記事でわかること:「大手」3種類の違いと未経験に開いている枠 / 大手SIerの中途が難しい理由 / 大手に入っても手を動かせるとは限らない構造 / 中堅SIerを選ぶ理由と見分け方 / それでも大手を受ける価値

まず「大手」を3つに分ける

インフラエンジニアが「大手」と言うとき、実際には性格の違う3つが混ざっています。ここを分けないと、難易度の話ができません。

種類どんな会社か未経験の中途枠
大手SIer顧客から直接システムを請け負う。NTTデータ、野村総合研究所、富士通、NEC、日立、SCSK、TISなどが一般にこう呼ばれるほぼない
大手事業会社の社内インフラ(情シス)メーカーや金融など、IT企業以外の大企業の社内システム部門ほぼない
大手SES・ITアウトソーシング技術者を顧客先に常駐させる。従業員数千人規模の会社もあるある

「大手に転職したい」と考えて求人を見ていくと、未経験歓迎で出てくるのは3つ目がほとんどです。1つ目と2つ目は、中途採用の入口が経験者向けに設計されています。

ここで注意したいのは、3つ目の「大手SES」は、会社の規模が大きいことと働き方の良さが直結しない点です。常駐先が決まって初めて仕事の中身が決まるため、会社の看板より配属先のほうが日々の業務を左右します。この話はインフラエンジニアのスクールは必要かでも「案件ガチャ」として詳しく書きました。

未経験から大手SIerへの中途転職が難しい理由

正直に書きます。難しいです。理由は主に2つあります。

1. 新卒採用と中途採用で入口が別になっている

大手SIerは新卒採用を大規模に行っていて、そこで採用した人材を研修から育てる仕組みを持っています。「未経験を育てる枠」は新卒側に集約されていると考えると分かりやすいと思います。

裏を返すと、学生の立場であれば大手SIerは十分に狙える対象です。もし今まだ学生の方がこの記事を読んでいるなら、中途で入り直すより新卒で入るほうが圧倒的に楽です。一方、中途採用は欠員補充や事業拡大に伴うもので、即戦力を前提に設計されています。

2. 応募資格に実務経験が入る

大手SIerのインフラ系ポジションの求人を見ると、応募資格に実務経験の年数が書かれていることがほとんどです。ポジションによって幅がありますが、開発またはインフラの実務1年以上を求めるものから、3年以上の業界経験に加えてクラウド(AWS・Azure・GCP)の設計構築経験やセキュリティ経験を求めるものまであります。

学歴については不問としている求人も少なくありません。大手SIerの中途で効くのは学歴より実務経験、というのが求人票から読み取れる傾向です。ここは未経験者にとって、悪い話ばかりではありません。経験さえ作れば道は開くということでもあるからです。

※応募資格は企業・ポジション・時期によって異なります。実際に狙う会社の最新の求人票をご確認ください。

大手に入れても、手を動かす経験が積めるとは限らない

ここがこの記事で一番お伝えしたい部分です。難易度の話とは別に、そもそも未経験者にとって大手SIerが最適な環境なのかを考える必要があります。

請負の階層で、担当する工程が変わる

SIerの業界は、案件の規模が大きいほど階層構造になります。顧客から直接受注する会社を一次請け(元請け・プライムベンダー)と呼び、そこから下へ仕事が流れていきます。

階層担う会社主に担当する工程
一次請け(元請け)大手SIer要件定義、基本設計、プロジェクト全体の管理、ベンダーの取りまとめ
二次請け中堅SIer詳細設計、構築・開発の実作業
三次請け以降中小SIer、個人下流工程(テスト、定型作業など)

この構造から見えてくることがあります。大手SIerが担当するのは上流工程で、実際の構築作業の多くは下請けに委託されます。

つまり大手SIerのインフラ担当は、サーバーにログインして設定を入れる時間より、要件をまとめ、方式を決め、協力会社の進捗と品質を管理する時間のほうが長くなりやすい。これは会社としては正しい役割分担ですが、「手を動かして技術を身につけたい未経験者」にとっては、必ずしも理想の環境ではありません。

未経験がまず必要なのは、手を動かした経験

最初の数年で身につけるべきなのは、Linuxを触り、ネットワークを設定し、障害を切り分ける経験です。この土台がないまま管理側の仕事に就くと、「協力会社の言っていることの妥当性が判断できない」という状態になります。それは本人にとってもきつい状況です。

だから私は、未経験から目指す先としては構築の実作業に入れる会社のほうが合っていると考えています。階層で言えば二次請けにあたる中堅SIerです。

これは「大手が無理だから妥協して中堅」という話ではありません。順番の問題です。手を動かす経験を先に作り、その経験を持って大手の中途要件を満たしにいく。こちらのほうが、遠回りに見えて確実です。

現実的な入口としての中堅SIer

中堅SIerを勧める理由を整理します。

  • 設計・構築の実作業に関われる。詳細設計から構築までが担当範囲に入るため、技術が手元に残る
  • 採用の間口が大手より広い。実務未経験でもポテンシャル採用の枠がある会社が存在する
  • 自社で案件を持っている分、配属のブレが小さい。純粋なSESに比べると、どんな仕事をするかが入社前に見えやすい
  • 3年後に選択肢が広がる。実務経験を作れば、大手SIerの中途要件に届く

3つ目は地味に重要です。SESの場合、入社時点では常駐先が決まっておらず、配属されるまで仕事の中身が分かりません。自社で案件を抱えている会社なら、面接の段階で「どのプロジェクトに入る想定か」を具体的に聞けます。

2段構えで考える

大手を諦める必要はありません。時間軸を分けるだけです。

時期やることねらい
1社目(中堅SIerなど)設計・構築の実務を経験する。並行して資格を取る職務経歴書に書ける実績を作る
2〜3年後大手SIerや事業会社の中途に応募する実務経験の要件を満たした状態で勝負する

大手の中途は経験者向けに設計されているので、経験を作ってから行くほうが、未経験のまま挑むより成功率が高いのは当然です。急がば回れという言い方が、この職種にはよく当てはまります。

私が入ったのは、大手ではない小さな会社でした

参考までに、私自身がどこにいたかも書いておきます。未経験で入った1社目は小さな会社です。客先常駐ではなく自社の中で働く形で、お客さんのシステムを見ていました。

設計や構築にどれくらい関われたかというと、最初は運用が中心で、そこから徐々に構築も任されるようになったという流れです。ただしお客さんに何かを提案する場面は多くありませんでした。基本は現状維持で回っていきます。モダンな案件も、正直なところ多くはありませんでした。

ここから言えるのは、会社の規模と、任される工程は別の話だということです。大手に行けば自動的に上流の仕事が来るわけではありませんし、小さな会社だから運用しかできないわけでもありません。実際、私は小さな会社で構築を経験しました。

ただ一つ確かだったのは、提案や設計をやるには、それを考える時間と知識の両方が要るということです。当時の私にはどちらも足りませんでした。会社を選ぶときに規模だけを見ていると、この部分は見えません。

先に正直に書いておきます。私は転職活動で大手企業を受けていません。ですので、ここに「大手の選考はこうだった」と書けることはありません。周りで大手に転職していった人も、私の知る範囲にはいません。

そのうえで書けるのは、自分の会社選びの話です。いまの会社を選んだ理由は、インフラだけでなく開発もやりたかったからでした。規模で選んだわけではありません。

「大手に行きたかったか」と聞かれれば、新卒のときであれば行っていたと思います。行けるのであれば行ったほうがいい、というのがいまの考えです。ただ、未経験から大手を狙うのは現実的ではないとも思っています。新卒であれば可能だと思いますが、未経験での中途は別の話だ、というのが私の見方です。

それでも大手を受けてみる価値はある

ここまで「中堅SIerが現実的」と書いてきましたが、大手を受けるなという意味ではありません。むしろ、受けておいたほうがいいと思っています。理由は3つです。

1. 落ちても失うものがない

応募のコストは、書類を作る時間と面接の時間だけです。落ちても記録が残るわけでも、次に不利になるわけでもありません。期待値の計算として、受けない理由が見当たらないのが正直なところです。

2. 選考基準が分かる(答え合わせになる)

これが一番の収穫かもしれません。実際に応募すると、求人票に書かれていない期待水準が見えてきます。書類で落ちるのか、面接まで進むのか、どの質問で詰まるのか。「自分に何が足りないか」の具体的な答えが返ってくるので、その後の学習の的が絞れます。

準備が終わってから応募するより、応募しながら準備を進めるほうが早いというのは、インフラエンジニアに未経験から転職する手順とロードマップでも書いたとおりです。大手への応募は、この答え合わせとして特に情報量が多くなります。

3. まれに枠が開くことがある

大手SIerでも、事業拡大や大型案件の受注に合わせて、経験の浅い層を受け入れる募集が出ることがあります。頻繁ではありませんが、ゼロではありません。見ていなければ気づけない枠なので、求人を追う価値はあります。

こういう募集は公開求人に出ないこともあるため、転職エージェントに登録して「条件に合うものが出たら教えてほしい」と伝えておくのが効率的です。サービスの選び方はインフラエンジニアの転職サイトおすすめ|現役の選び方にまとめています。

受かる見込みは薄いだろうと思った会社も、実際に受けてみました。得たものはあります。技術レベルが高く、求められることも多いと、応募してみて肌で分かったことです。

転職エージェントについては、未経験のときに使いました。ただ、そのとき紹介されたのはSESばかりでした。ここは未経験のときの話なので、経験がある状態で使えば、また違った結果だったかもしれません。当時どう考えて断ったかはSESはやめとけと言われる理由に書いています。

求人票に書いていなくて後から分かった、という類のことは特にありませんでした。驚いたのはむしろスキルレベルのほうで、思っていたより高いものが求められる、というのが正直な感想です。

中堅SIerを選ぶときに確認したいこと

「中堅SIer」という区分は求人票に書いてありません。次の点を面接や面談で確認すると、実態がつかめます。

  1. 元請け(自社受注)の案件比率はどれくらいか。ここが高いほど、上流から関われる可能性が上がります
  2. 客先常駐の比率と、常駐先の決まり方。「入社後に決まる」なら、実質SESに近い働き方だと考えてください
  3. 入社1年目が担当する工程。監視・運用で終わるのか、構築に入れるのか。ここを具体的に聞きます
  4. 技術領域が偏っていないか。オンプレのみか、クラウドも扱うか。今後のキャリアの幅に効きます
  5. 資格の支援制度。受験料補助や合格報奨金があるかは、学習を続けるうえで実利があります

3番目は必ず聞いてください。「未経験歓迎」と書いてある求人でも、実際の配属先が監視オペレーションだけというケースはあります。会社の規模や知名度より、入社後に何を任されるかのほうが、その後の市場価値に直結します。

大手にこだわりすぎる落とし穴

公平に、逆側も書いておきます。

大手だから働きやすい、とは限りません。プロジェクトの規模が大きいほど関係者が増え、調整と資料作成の比重が上がります。技術に触れたくて入った人が、会議と管理に時間を取られて「これがやりたかったことではない」と感じる。よくある話です。

インフラエンジニアという仕事そのものの実態についてはインフラエンジニアはやめとけ?現役3年目の本音に正直に書きました。会社の規模を検討する前に、そもそもこの職種が自分に合うかを確認しておくほうが順番として先です。

それに、大手に入ることは目的ではなく手段のはずです。安定した収入がほしいのか、技術を深めたいのか、名の知れた会社で働きたいのか。目的によっては、中堅SIerや事業会社のほうが答えに近いこともあります。

まとめ

インフラエンジニアの「大手転職」は、次のように整理できます。

  • 「大手」には大手SIer・大手事業会社の社内インフラ・大手SESの3種類があり、未経験の中途に開いているのは大手SESが中心
  • 大手SIerは新卒で入るのが本来のルート。中途は実務経験を前提に設計されている
  • 大手SIerは上流工程が中心で、構築の実作業は下請けに流れる。未経験が最初に必要な「手を動かす経験」は積みにくい
  • だから現実的な入口は、設計・構築に関われる中堅SIer。2〜3年で経験を作れば、大手の中途要件に届く
  • それでも大手は受けてみる価値がある。落ちても失うものはなく、選考基準の答え合わせになる

大手を目標に持つこと自体は、まったく悪くありません。ただ、1社目で叶えようとすると難易度が跳ね上がります。目標は大手のまま、入口を中堅SIerに置く。この2段構えが、未経験から始める人にとって一番確率の高いルートだと思います。

まずは求人票を見比べて、応募資格に書かれた実務経験の年数を確認してみてください。「あと何年の経験があれば届くのか」が具体的に見えると、目標が現実的な計画に変わります。そこからが本当のスタートです。

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